1989年、ダニエル・ラノアは例えるなら『最強の保険外交員』であり、『末期患者であるディラン』と最高額の契約を結んだ挙句、その病をすっかり治してしまった。彼のおかげで私たちはいまでもディランの新作が聞けている。少し思い返せば、技術革新が多くの芸術分野で担い手を完全に失わせた時代である。行き場をなくし路頭に迷う『古い天才』の姿は容易に想像がつく。だが、いかなる形であれダニエル・ラノアはディランに創造をやめさせなかった。
その意味でも『OH MERCY』は紛れも無く傑作である。
自己啓発と自己批判を繰り返すような物語は、閃きを無くしたただの凡人の姿だ。ダニエル・ラノアがディランに『時代は変わるのさ、帝国も砂に帰るように…』と罵倒している、誇張された音のひろがりの中で!しかし、ディランの恐るべき化学反応体質は、確信的に打ちのめされたマゾの高揚を見事にエネルギーに昇華させた。これは奇跡のように生き返っていく姿だ。ここで二重螺旋の本質が見事に集約され、表現されていく。
おまけをいうなら、「Series of dream」を外したディランの感性がすごい。『ダニエル・ラノアのやりすぎ』を咎めて、このアルバムを最終的に掌握する。エンディングは「Shooting Star」でなければいけなかった。「Series of dream」の入り込む隙間はない。
『OH MERCY』でディランは本当の偉大なる復活を遂げる。 noted at 2005/09/28
The Neville Broth
ダニエル・ラノア「Oh Mercy」製作直前のプロデュース作品が「イエロー・ムーン」 ギター・ブライアン・ストルツ、ベース・トニー・ホール、ドラム・ウィリー・グリーンはバンドメンバー、末弟のシリルもパーカッションで参加
映画 『 ハイ・フィデリティ HIGH FIDELITY 』
ニック・ホーンビー原作の中古レコード屋を舞台にした恋物語。面白いので見てください。Most Of Timeが挿入歌で使われています
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by bar-dylan
| 2008-07-24 17:22
| DYLAN's Album